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国内石化製品の需給改善 エチレンなど相次ぎ設備停止
国内市場で石油化学製品の需給バランスが改善している。基礎原料となるエチレンなどの生産設備停止が相次ぎ、供給が絞られた。内需は頭打ちだが、輸入品が少なく国産品の引き合いが強まっている。今年はアジアで設備の定期修理が続く見通しで、需給は一層引き締まるとの見方が多い。
日本有数の石油化学コンビナートを抱える岡山県倉敷市の水島工業地帯。2月中旬、旭化成ケミカルズのエチレン設備が一基停止した。同設備の年間生産能力は約44万トン。隣接する三菱化学の設備に生産を集約し、4月1日に共同運営会社「三菱化学旭化成エチレン」が発足する。
石化大手は内需の減少や国際競争の見直しを進めてきた。三菱化学は2014年に鹿島事業所(茨城県神栖市)のエチレン設備を1基停止し、石化業界では01年以来の大規模な能力削減となった。15年には住友化学が千葉工場の設備を止め、国内生産から撤退した。
国内のエチレン生産能力は13年末の約720万トンから16年4月には600万トン強にまで落ち込む。ピークの1999年末と比べると2割少ない。
設備停止の流れはエチレン由来の製品も同様だ。合成樹脂の原料となるスチレンモノマーは2月に旭化成ケミカルズが水島で年産32万トンの設備を停止した。15年には千葉県で住友化学系の会社が生産を止めた。「輸入品の代替として製品の国内出荷が増えており、(エチレンの既存設備は)フル稼動の状態」(石油化学工業協会の浅野敏雄会長=旭化成社長)が続く。
需給バランスの変化は合成樹脂の価格交渉にも影響する。原料のナフサが大幅に下落する中でも製品の下げ幅は小さい場合が多い。
ポリエチレンとポリプロピレンは2月に値下がりしたが、下げ幅は15年末比2%にとどまった。価格交渉では「国内需給が引き締まっていたことも影響した」(樹脂フィルムメーカー)。
4月以降、ナフサの下落を映して合成樹脂は一段と値下がりする見込みだが、下げ幅は小さくなるとの見方が目立つ。需給引き締まりに加えて、アジアのスポット(随時契約)価格が上昇したことも背景にある。
今後は国内だけでなく、アジア全体の需給も引き締まりそうだ。今年はアジアのエチレンや製品の生産設備の定期修理が集中する。消費財向けの需要も底堅く、「17年まではフル稼動が続く」(昭和電工の市川秀夫社長)との声もある。
ただ、円高基調がさらに進めば輸入品が増える可能性もある。影響は薄いが、中国の景気減速による需要減の懸念は残る。
エチレンの能力削減は今回の旭化成ケミカルズの停止で一段落する。18年以降は米国のシェールガス由来や中国の石炭化学製品の増産も予想される。石化各社は将来的に、供給能力のさらなる削減を迫られそうだ。
(日本経済新聞 3月19日付 朝刊 より)